2017年6月23日 (金)

河童のユウタの冒険

『河童のユウタの冒険』  斎藤惇夫、福音館書店

あの斎藤惇夫さんの長編冒険ファンタジーです!
かつてガンバやカワウソの冒険に熱中したなら必読です。
そして指輪ファンにもぜひ読んでもらいたいです。

北国の湖の住む河童のユウタは、ある日突然、キツネと旅立たなければならないと言われる。わけがわからないまま、キツネともうひとりの仲間と共に龍川を水源まで遡る旅が始まる・・・。

『哲夫の春休み』で斎藤さんが新潟の出身だと知ったので、まずこの湖って瓢湖?と思いましたが、福島潟らしいですね。瓢箪湖というほうが瓢湖のようです。
ユウタたちが水源まで旅するといったい何が起こるのか、途中いろいろなピンチもあってハラハラドキドキで、分厚い上下巻ですがどんどん読み進んでしまいました。現代文明への批判もあったり、最後ちょっと話を広げすぎたかなという感じもありますが、とても面白かったです。
懐かしい仲間がちらっと出るのもうれしい。
途中すごく気になる人物が登場しますが、あとがきを読んでこの作品が書かれた経緯がわかって納得&感動しました。そうか、斎藤さん、編集者だったんですよね~。その辺の背景などいろいろ気になるので『わたしはなぜファンタジーに向かうのか』も読みたいです。

私ははじめうっかり見落としていたのだけど、この本の扉ページ、言葉だけじゃなくて(もちろん言葉とその出典も重要ですが)、装丁にも注目してください。

この本を読んで間もない時に、規模は全然違うけれど川を水源まで遡ることができてよかったです。

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2016年1月11日 (月)

「CREA」の少年少女文学特集

Kc3z0032_250x188 文藝春秋社の女性雑誌「CREA」の2月号の特集「大人の少年少女文学」。
友人からの声かけで、100冊リストの一部をお手伝いしました。
雑誌を受け取ってみると、すごく力の入った盛りだくさんな特集!  個人的事情を抜きにしても、これは永久保存版に値すると思います。

いろいろなランキングやインタビューなど面白い記事がたくさんありましたが、気にいったのはなんといっても各種の食べ物特集(笑)。おいしそうな食べ物ランキングやレシピはもちろんだけど、「妄想ニホン料理」ならぬ「妄想モノガタリ料理」ともいえそうな、「思ってた味と違ってた!ヘンな食べ物図鑑」が特にいいです~。ペミカンもちゃんと登場するし、レンバスについてのコメントには同感だし。アブラミのお菓子とかあぶりソーセージとかは子どもの時に読んでないので妄想してなくて残念ですが、こけももについては「スプーンおばさん」を読んでいろいろ想像してたので、共感しながら読みました。

不満なのは、映像化作品ランキングに「ロード・オブ・ザ・リング」が入ってないこと・・・。児童文学に入らないと判断されたんですね、きっと。(原作本はランキングに入ってるとか、シャーロック・ホームズだって児童文学じゃないのに、というのは考えないでおこう。)

100冊リストで私が紹介文を書いたのは、006「うさぎ屋のひみつ」009「王への手紙」022「ガリヴァー旅行記」031「黒い兄弟」043「第八森の子どもたち」 045「宝島」052「チョコレート工場の秘密」071「光の六つのしるし」086「魔女の宅急便」097「ローワンと魔法の地図」です。ライターさんがある程度リライトしてくれていて、元の文章よりもすっきり読みやすくなっているのがさすがと思うのですが、1カ所だけ修正ミスがありました。「光の六つのしるし」の紹介文で、「十二夜」にカギカッコは不要です!  シェイクスピアの作品ではありません。「クリスマスや十二夜などの民間伝承」と書いたんですよ~。(そもそもシェイクスピア作品に十二夜の行事とか伝承が出てくるならよかったわけなのですがそうではないので。)あとちょっと残念だったのは、雑誌の対象読者を考えたらヒルクレストのシリーズも入れたいけど品切れだからダメだろうねって思ってたのに、特集記事で「丘の家のセーラ」が何度か言及されていたので、やっぱり入れたかったな~ということ。入れたかった作品を挙げだしたらきりがないですけど。

100冊リストのほとんどは知ってる人が書いたので、紹介文を読むのも楽しいし、未読の作品もそのうち読んでみたいと思うので、今後の楽しみが増えました。こんな立派な雑誌の特集にかかわるという貴重な経験ができたことに感謝です。

おまけ:100冊リストの各作品の登場人物(3人ぐらい)に、最終的に誰が挙がっているかチェックしたら結構面白かった~。「おお、そうきたか」とか「え?そっちにした?」などいろいろ思いました。3人と言われて悩んだのもあったけど2人とか4人でもよかったようでちょっと気が抜けました。

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2015年11月 9日 (月)

「神々と戦士たち」シリーズ

「クロニクル千古の闇」のミシェル・ペイヴァーの新しいシリーズ!
全5巻の予定で、第1巻が「青銅の短剣」。
「千古の闇」は石器時代でしたが、これは青銅器時代の古代ギリシアです。
突然黒い戦士たちに襲撃されて逃げ惑うヤギ飼いの少年。途中で隠れた洞穴でクレタ島から来た男から青銅の短剣を託されました。少年は妹を探し出そうとしながら、自由を求めて船から逃げてきた少女に出会い、部族間の闘争に巻き込まれていきます。

今度の作品も古い時代の話だけど、その生活の様子などがしっかり描かれていてさすがペイヴァーという感じです。ギリシアの神々もまだそれほど個別化してないプリミティブな状態みたいです。そして何といってもイルカの視点からの描写やその活躍ぶりがユニーク。
第2巻も最近出たようなので早く読みたいです。

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2014年10月17日 (金)

ラストレター

『ラストレター』  さだまさし

週刊朝日に連載されていた小説の単行本化。週刊誌読むのは面倒だったので、単行本になってやっと図書館で借りて読みました。

聴取率の低いラジオ深夜放送枠の大改革に名乗りを上げた新米アナウンサーが、メールもファックスもツイッターも使わずハガキのお便りで構成する「昭和の匂い」のする番組を作っていく話。「さだまさしのセイヤング」を下敷きにしているから懐かしいのなんの。本当の深夜にやっていたセイヤングとかオールナイトニッポンとかはほとんど起きてない時間だったから数回しか聞いたことはないんだけど、土曜日23時からの「さだまさしのセイヤング」は布団の中でヘッドフォンで結構聞いてたから。(だからその頃のシングル曲はアルバムに入ってなくても結構知ってる。)「深夜の句会」はもちろん覚えている(超有名だった常連投稿者のお名前も登場する←この前「生さだ」でも言ってた)けど、「ゆく週くる週」ってそういえばあったっけ~。そしてサン・サーンスの「白鳥」が流れる中(「セロ弾きのゴーシュ」だったような気もして混乱してるけど)でのラストレター。9月に文化放送でアルバム「第二楽章」発売&「ラストレター」発売に合わせた番組をやって、その中でこの本に出てくる番組の再現的なことをやっていたので、読んだ後でその録音をもう一度聞いて楽しみました。生で聞いた時、「白鳥」が流れたのがジーンときたんだよね~。(パソコンでラジオが聞けて予約録音までできるなんて、便利な時代になったんだなあ。)

面白くてほろっと泣ける本でした。外で読んでたから、最後のほうはうるうるして困っちゃった。

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2014年8月15日 (金)

光のうつしえ

『光のうつしえ』  朽木祥、講談社

昨年秋に朽木祥さんの講演会を聞いた時に新刊で出ていた本で、ずっと読もうと思いながらなかなかできず、でも8月には絶対読まなきゃと思って(夏休みに読む中学生などの邪魔にならないか気にしつつ)8月6日には間に合わなかったけど8月9日に読みました。(そして8月15日にこれを書いています。)

かつての廣島と、あの日のヒロシマと、現在そして未来の広島をつなげる物語。文化祭で「あのころの廣島とヒロシマ」をテーマに美術作品を取り組む中で、身近な人のこれまで知らなかったつらい体験を知り、その思いをどのように伝えていったらいいかと考える中学生たち。ああ、そうか、講演会で言っていた Compassion(共感共苦)とはこういうことなんだ。この美しい物語を多くの人が(特に若い人が)読んで、自分の問題として受け止めて考えてくれたらいいなと思います。

「加害者になるな。犠牲者になるな。そしてなによりも傍観者になるな。」
先生が伝えたこの言葉は、重いけれども大切なことです。

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ゲド戦記

ゲド戦記  アーシュラ・ル=グウィン、岩波書店
1.影との戦い
2.こわれた腕環
3.さいはての島へ
4.帰還
5.ドラゴンフライ
6.アースシーの風

ゲド戦記を読んだのは大人になってからで、4巻が出てからだったのだけど、ちょっと苦手感があったんですよね。でもその後5巻6巻が出て、それを読みたいけど前のを再読して思い出さなければならないからなかなかできなくて、ずいぶん経ってしまってました。ひゃ~、6巻が出たの、2003年だって。10年以上前なんだ。そうだよねえ、指輪仲間で話題にしてたんだから。で、「オレンジ党」シリーズを読み終わってまだ時間に余裕がありそうだからとついにチャレンジした次第です。

まずは内容をほどよく忘れている状態で、話のタネにジブリのアニメを見ました。忘れてるからまあそれなりに見られたけど、こういう話ではなかったと思うよ。絵はきれいだけどね。それで、いざ1巻から読もうと思って図書館に行ったらどの版も1巻2巻がなくて、まあその2つは大筋だけは覚えてるから後でいいことにしてリクエストしておいて、3巻と4巻から読み始め。読んでからアニメは見られないね。5巻(短編集)を読んでる時に1巻2巻が来て、読み終わった本も貸出延長して手元に全部置いてあちこち確認したりして、ついに6巻まで約1か月がかりで読了。

いや~、どうして苦手と思っていたんだろう。深くてすごい、この世界。短編集でこの世界のいろいろな時代の話を読めたのがよかった。そしてそれまでの世界観を壊していくような6巻。子どもの時に3巻までを読んでてすごく好きだったら、4巻以降を読むのがつらいことはあるだろうけど、そうでない私は6巻まであってひとつの物語なんだなって思いました。読めてよかった。長年の宿題をやっと終わらせた気分です。

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2014年6月26日 (木)

オレンジ党最後の歌

『オレンジ党最後の歌』  天沢退二郎、復刊ドットコム

二十数年経って書かれた、オレンジ党シリーズの続き。復刊ドットコムから出たけどこれは新刊で、旧作の復刊が実現する中で物語が動き始めたということのようです。
2011年末に出たこの本、読みたいリストにはずっと入れていたけれども、読むには旧作を読み返さないとすっかり忘れてる。シリーズ全部を読むのは大変なのでなかなか取り掛かれずに2年以上経ってしまったのを、やっと読むことができました。

『闇の中のオレンジ』 (短編集)

『オレンジ党と黒い釜』
『魔の沼』
『オレンジ党、海へ』

と読み返した後、この『オレンジ党最後の歌』。

これまでわからなかったところが説明された部分もあり、謎が深まったような部分もあり。なんにしてもおなじみのメンバーたちが再び活躍するのが読めてうれしいです。
このシリーズは黒いぬめぬめした水がひたひたと迫ってくるような怖さが印象的ですが、この作品では不気味な管理社会の怖さみたいなものも少し見えて、時代の反映だろうかと思っていたら、もっとすごい現実の反映があり・・・。と思ったら、この本、出版は2011年だけども挿絵の都合で3年以上刊行が遅くなったのであって、書かれたのは2006~7年だという衝撃の事実。まだ気持ちの整理がつかない感じがしています。

作品紹介の天沢退二郎さんが語る「オレンジ党」の世界を読んで、うちにある『光車よ、回れ!』も含めてまた振り返って読んだりしているところです。

天沢退二郎さんはランサマイトとして有名で、ランサム的には『闇の中のオレンジ』で「(船には)アホイ!ってよぶんだって、本で読んだよ」といって「アホイ!」と呼びかけるのがうれしいところです。この『最後の歌』でも、その時のことを思い出して「アホイ!」と呼びかけあうシーンがあって思わずにんまりしてしまいました。

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2014年5月 7日 (水)

『六人の探偵たち』

『六人の探偵たち』  アーサー・ランサム、神宮輝夫訳 岩波少年文庫

神宮先生による訳の少年文庫版が出ました~。他の巻は買っただけでまだ読んでいないものもあるけれども、訳者が変わったこれはやはり気になる度合いが大きいので、早速読みました。章のタイトルとか、印象に残っていたセリフとか、前のをはっきりは覚えてなくても、変わったことだけはわかるところもいくつか。でもまあ、『オオバンクラブ物語』の時には固有名詞などいろいろ変わって結構驚いたのが、ほぼそれらを踏襲しているので大きなショックはありません。むしろ『オオバンクラブ物語』で気になっていた「クート」という呼び方が今度は出てこなかったのでほっとしたり。

それでもいくつか気になったところはあるので、以下ネタバレで。

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2013年12月26日 (木)

最近読んだ本いろいろ

電車で都心に何度も出かけたものだから、久々に結構本を読みました。忘れないうちに記録しておきます。

『天狗ノオト』  田中彩子、理論社

おじいちゃんの日記に書き残された「天狗ニアフ」の言葉。それが何を意味するのか、おじいちゃんは天狗に会ったのか、少年たちが調べ始める。
というと、よくありそうな冒険ものっぽく思えるけど、木三太が語る話がすごく重くて深くて、児童書のレベルじゃない感じ。読みながら思い出していたのは、さだまさし『はかぼんさん 空蝉風土記』の中の山伏の話でした。

『ローズの小さな図書館』  キンバリー・ウィリス・ホルト、徳間書店

生活のために歳をごまかして移動図書館のバスの運転手として働き始めた14歳のローズ。その後も作家になる夢を持ち続けたローズとその家族の姿を、それぞれの時代と話題の本をからめて描いています。心温まる、素敵な物語でした。

『庭師の娘』  ジークリート・ラウベ、岩波書店

18世紀のウィーンで、庭師の娘マリーは看護師になるためにもうすぐ修道院に入ることになっているのだけど、本当にやりたいのは庭師の仕事。女が庭師などとんでもないという時代に、「やりたい」という気持ちを持ち続けるマリーの姿を、天才音楽少年との出会いも交えて描いた、これまた素敵な物語でした。

『プーカと最後の大王』  ケイト・トンプソン  東京創元社

時間のない国で』の続編が出ていたんですね~。アイルランドのフィドル弾きのJJが、一家のお父さんとなって再登場です。今度の本には楽譜はないけど、砦を守る幽霊と話ができる娘ジェニーと、ジェニーに振り回される家族や砦の発掘作業隊の様子など、軽妙なテンポは変わりありません。シリーズでさらに次も出ているので楽しみが続きます。

『インディゴ・ドラゴン号の冒険』  ジェームズ・A・オーウェン、評論社

別世界<夢の多島海>の地図の守り手がその世界の存亡をめぐって戦う物語。いろんな物語や神話の要素がいっぱい取り入れられています。よくもまあこんなにたくさん取り込んでまとめられたものだという感じ。メインのお勧め(?)ポイントはネタバレなので言えないという(読む前にそれっぽいことを言ってしまったと思いますが、私もそれを聞かなかったら読まなかったのでご容赦ください)、しかも評論社のサイトの紹介文、思い切りネタバレしてるし(^^;;。とりあえず私の周りのファンタジー好きの人は、話のタネにでも読んでみてね。シリーズになっているので、続きも読まなくちゃ。

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2013年12月 3日 (火)

『あと少し、もう少し』

『あと少し、もう少し』  瀬尾まいこ、新潮社

中学校の駅伝の話。
陸上部を中心に他からも選手を集めてチームを編成して練習を重ねて本番を走るまでを、各区を走る選手の視点から一人称で描いています。この「違う視点から見る」というのがうまくできていて、例えば自分が思い込んでいる自分像が実は他の人には全然違うふうに捉えられていたり、あるできごとが他の立場からは実はこういうことだったんだとわかったりするのがすごく面白い。級友にこう見られたいと作ったキャラや、いろいろ抱えている悩みなどが、走っているうちに解きほぐれていくような感じがします。ただ先生の視点からの章もあったらもっとよかったのにな。

面白かったのでこの作者の他の本を調べてみたら、ずっと前に読みたい本にリストしていた『図書館の神様』というのがあったので、この機会にリクエストしました。

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