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2005年6月21日 (火)

ウェールズ伝承(1)海に沈んだ国

本や書類の山の中に、Foggyさんからお借りしているWelsh Tales for Childrenの本が埋もれてしまっていたのを発見しました。すみませんm(_ _)m
お詫びもかねて、この本に載っている伝承をかいつまんで少しずつ紹介していきたいと思います。第1回の今日は、夏至スペシャルということで(^^)、「海に沈んだ国」です。
原文でCardigan BayとかAberdoveyといった地名を見るだけでドキドキしてしまうんですけど、どうしましょう?

* * * * * * * * * * * * * * *

昔々、北ウェールズの西に豊かな国があった。今ではその場所にはカーディガン湾の青い海しかなく、その国を訪れることはできない。しかし海が静かな干潮時には、かつてその国を洪水から守った壁の遺跡に波があたって白く泡立つのが見えるという。

その国の名はGwaelodといい、20の町に教会や麦畑、イギリスで一番にぎわう港があった。国を囲む海は満潮時には人々の背より高くなったが、海との境の丈夫な壁を二人の大公が守っているので、人々は安心して暮らしていた。

Seithenin大公は壁の南側を守っていた。現在のアベルダヴィにつながるあたりである。Teithrin大公は壁の北側を守っていた。現在シェル島と呼ばれるあたりが壁の北端だった。Teithrinは壁の状態にいつも気をつけていたが、Seitheninは大酒飲みで、壁の上に城を建てたからいつでも監視できると豪語するものの、城では酒を飲んでいるばかりだった。Seitheninが守っているはずの壁が傷んできていることにTeithrinは気づいていたが、年上の大公を非難することにはためらいがあった。また、SeitheninにはRhonwenという娘がいて、Teithrinはいずれ彼女と結婚したいと思っていた。TeithrinがSeitheninに壁の修理を進言しようと決意した時には、もう手遅れだった。

ある高潮の日にものすごい嵐がやってきた。Teithrinは部下たちと北の壁を点検したところ大丈夫だったが、南の弱い壁--Rhonwenが父親と住んでいる城のあたりのことが気がかりだった。部下に北の壁を任せてTeithrinはSeitheninの城に急いで向かった。嵐はますますひどくなり、波が壁を越えて高く打ち寄せてくる。夜が近づいて暗くなってきた。Teithrinはひびの入った石壁が波を受けて揺れているのを見て、このままでは壁が城ごと崩れてしまうと思い、波しぶきをあびながら城に駆け込んだ。

城の中ではSeitheninがワインを飲み、部下たちは酔って寝込んでいるところだった。
「すぐ部下を起こして壁を直すんだ!」とTeithrinは叫んだ。「まあ座って飲みたまえ、Teithrin。部下は寝てしまっているんだ。」とSeitheninは言った。らちがあかないと思ったTeithrinは、自分で人を起こして集めようとしたが、誰ひとり来なかった。巨大な波が壁に向かって来るのが見えた時、Rhonwenがやってきた。「城が崩れてしまうわ。父を助けて!」

TeithrinはRhonwenと城の中に戻った。「Seithenin、壁が壊れて敵がやってくるぞ!」Seitheninは立ち上がって剣を抜き、「敵だと? Seitheninにかなう敵などいるものか!」と叫び、止める間もなく駆けだした。そして雄たけびをあげながら、波に向かって突進していった。その時轟音がして城が崩れ始めた。TeithrinはRhonwenを連れて波から逃れようと崩れた塔の石を登り始めた…

TeithrinとRhonwenが気がついた時、嵐は去り、朝になっていた。近くの丘に登り見渡してみると、20の町も教会も麦畑も、何も見えなかった。Gwaelodの国は失われてしまったのだ。そこにはカーディガン湾の青い海原が広がるばかりだった。

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コメント

おお、ついに! 実はお貸ししたことすら忘れておりました(爆)
なーるほど。そういう話だったのですか。どうもありがとうございます。
ところで、シェル島ってどこにあったのかしらん。私たち、見たはずなのでしょうか?

投稿: Foggy Scilly | 2005年6月21日 (火) 20時26分

シェル島はもっとずっと北のほう。私たちは行きにDolgellauから川沿いに走って海に出たら南のTywynに向かったけど、北に向かってずっと行ったHarlechの近くです。島というか地図では砂州みたいな感じですが。

投稿: Titmouse | 2005年6月22日 (水) 18時36分

ノルマンディー辺りで海に沈んだ国の話がありませんでしたっけ(うろ覚え)?

ウェールズの話面白いです。是非続きをやって欲しいです。

投稿: 蓮 | 2005年6月23日 (木) 02時56分

こんにちは、面白そうなお話ですね。これからの続きはどうなるのでしょう。続きを楽しみにしております。・・・・英語の本なんですね?このご本。言語で読むっていいんだろうなあ。・・・遠い目になっちゃった。(笑)

さて、Musical Batonというイベントが弟子のところにも回ってまいりましたので、こちらにバトンをお持ちしました。気が向いたらどうぞです~。

投稿: 魔法使いの弟子 | 2005年6月23日 (木) 05時09分

横レスですが、蓮さん、フランス版沈んだ国はブルターニュの「イス」です。
イスのほうは、お姫様が淫乱だったとかなんとかいう話。
なぜそんな話になったかというと、ケルトの女神が、フランスがキリスト教化するときに、魔女的な立場に追いやられてしまった結果だとかなんとか。。

投稿: Foggy Scilly | 2005年6月23日 (木) 22時04分

Foggy Scillyさんありがとうございます。そうかブルターニュなのか。一つ勉強になりました。

>お姫様が淫乱だったとかなんとかいう話
キリスト化で神様が小さくなったり情けなくなったりしてったのは知ってますが、これはひどいです。なにもそこまで貶めなくたって。。。。

投稿: 蓮 | 2005年6月24日 (金) 01時43分

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